「年金と失業保険、両方もらえるって本当?」「退職のタイミングで受給額が変わるの?」と疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。
実は、年金と失業保険は条件次第で同時に受け取ることが可能です。
ただし、年齢や退職時期を間違えると、本来もらえるはずのお金を大幅に損してしまうケースも。
年金と失業保険の同時受給について、まず結論を簡単にまとめると以下のとおりです。
| 年齢 | 同時受給 | ポイント |
|---|---|---|
| 60〜64歳 | 条件付き | 失業保険を受給すると年金が停止 |
| 65歳以上 | 可能 | 調整なしで両方受け取れる |
| 障害年金受給者 | 可能 | 年齢に関係なく同時受給OK |
| 遺族年金受給者 | 可能 | 年齢に関係なく同時受給OK |
本記事では、年金と失業保険を同時にもらう具体的な方法から、損をしないための退職タイミング、実際の手続きまでを詳しく解説します。
- 自分が年金と失業保険を同時に受け取れるかどうか
- 60〜64歳と65歳以上で異なる受給ルール
- 退職日を1日間違えると数十万円損する理由
- 具体的な手続きの流れと必要書類
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年金と失業保険を同時にもらえる仕組みと基本条件
年金と失業保険を両方受け取りたいと考える方にとって、まず押さえておきたいのが「どんな仕組みで併給できるのか」という基本的な部分です。
結論からお伝えすると、年齢や年金の種類によって同時受給できるケースとできないケースがあります。
- 65歳未満で老齢厚生年金を受け取っている場合、失業保険との間で「支給調整」が発生する
- 65歳以上になると調整なしで年金と失業保険を両方受け取れる
- 障害年金・遺族年金は失業保険との調整がないため、いつでも同時受給可能
このセクションでは、失業保険と年金それぞれの基本的な仕組みと、両者の関係性について詳しく見ていきましょう。
そもそも失業保険(雇用保険)とは
失業保険とは、正式には「雇用保険の基本手当」と呼ばれる制度で、仕事を失った方が再就職するまでの生活を支えることを目的としています。
会社員として働いていた方が退職後にハローワークで手続きをすることで、一定期間にわたって給付金を受け取れる仕組みです。
ただし、単に退職すればもらえるわけではなく、「働く意思と能力がある」ことが条件となります。
つまり、求職活動を行いながら次の仕事を探している状態でなければ、受給資格は得られません。
- 離職日以前の2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算12か月以上あること
- ハローワークに求職の申し込みを行っていること
- 就職しようとする積極的な意思があり、いつでも働ける能力があること
参考:厚生労働省「雇用保険の基本手当について」
https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_basicbenefit.html
なお、65歳以上で退職した場合は「基本手当」ではなく「高年齢求職者給付金」という別の給付に切り替わります。
両者の違いを表にまとめました。
| 項目 | 基本手当(64歳以下) | 高年齢求職者給付金(65歳以上) |
|---|---|---|
| 支給方法 | 4週間ごとに分割支給 | 一括支給 |
| 最大支給日数 | 90日〜240日 | 30日または50日 |
| 年金との調整 | あり(60〜64歳) | なし |
| 再受給 | 条件付きで可能 | 何度でも可能 |
基本手当は分割で複数回に分けて支給されるのに対し、高年齢求職者給付金は一時金として一括で支給される点が大きな違いです。
年金の種類と失業保険との関係性
年金には大きく分けて「老齢年金」「障害年金」「遺族年金」の3種類があり、それぞれ失業保険との関係性が異なります。
まず、老齢年金は「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」の2階建て構造になっています。
老齢基礎年金は国民年金に加入していた全員が対象で、老齢厚生年金は会社員や公務員として厚生年金に加入していた方が上乗せで受け取れる年金です。
| 年金の種類 | 失業保険との併給調整 | 備考 |
|---|---|---|
| 老齢基礎年金(65歳以上) | なし | 同時受給可能 |
| 老齢厚生年金(65歳以上) | なし | 同時受給可能 |
| 特別支給の老齢厚生年金(60〜64歳) | あり | 失業保険受給中は年金が停止 |
| 繰上げ受給の老齢厚生年金 | あり | 失業保険受給中は年金が停止 |
| 障害年金 | なし | 同時受給可能 |
| 遺族年金 | なし | 同時受給可能 |
ポイントは、65歳未満で受け取る「特別支給の老齢厚生年金」と失業保険の間には併給調整があるという点です。
この場合、失業保険を受給している期間中は年金が全額支給停止になります。
一方で、障害年金と遺族年金については失業保険との調整がないため、両方を満額で受け取ることができます。
同時受給で知っておくべき「支給調整」のルール
「支給調整」とは、同じような目的を持つ2つの給付が重複しないよう、どちらか一方を調整する仕組みのことです。
失業保険は「働けるけれど仕事がない」人への所得保障であり、老齢年金は「老齢によって働けなくなった」人への所得保障です。
この2つの給付を同時に満額で受け取ると、所得保障が二重になってしまうという考え方から、調整のルールが設けられています。
厚生労働省北海道労働局の資料では、以下のように説明されています。
「失業給付と年金を同時に支給することは、その給付の目的から合理性を欠くこととなるため、失業給付を受けている期間中は、年金の支給が停止されます。」
引用:厚生労働省北海道労働局「現在年金を受けている方 これから年金を受ける予定の方へ」
https://jsite.mhlw.go.jp/hokkaido-roudoukyoku/var/rev0/0133/4099/201773111180.pdf
ただし、すべての年金が調整対象になるわけではありません。
調整の対象になるのは「65歳未満で受け取る老齢厚生年金」のみです。
以下に、調整対象になる年金とならない年金を整理しました。
- 特別支給の老齢厚生年金
- 繰上げ受給した老齢厚生年金
- 65歳以降の老齢基礎年金・老齢厚生年金
- 障害基礎年金・障害厚生年金
- 遺族基礎年金・遺族厚生年金
このルールを理解しておくことで、自分がどのパターンに該当するのか判断しやすくなります。
【60〜64歳】年金と失業保険を同時にもらう方法
60歳から64歳の方が年金と失業保険を受け取る場合、「支給調整」のルールを正しく理解することが非常に重要です。
この年代では、特別支給の老齢厚生年金を受給できる可能性がある一方で、失業保険を申請すると年金が止まってしまうケースがあります。
| 状況 | 年金 | 失業保険 | 結果 |
|---|---|---|---|
| 失業保険を申請した場合 | 全額停止 | 受給可能 | 失業保険のみ |
| 失業保険を申請しない場合 | 受給可能 | 受給不可 | 年金のみ |
| 65歳以降に失業保険を受給 | 受給可能 | 受給可能 | 両方受給 |
多くの場合、失業保険のほうが年金よりも金額が大きいため、総額で見ると失業保険を受け取ったほうが得になることが多いのです。
ここでは、60〜64歳の方が損をしないための受給戦略について詳しく解説します。
特別支給の老齢厚生年金と失業保険の併給条件
特別支給の老齢厚生年金とは、年金の支給開始年齢が60歳から65歳に引き上げられた際に、経過措置として設けられた制度です。
- 男性は昭和36年4月1日以前に生まれた方
- 女性は昭和41年4月1日以前に生まれた方
- 老齢基礎年金の受給資格期間が10年以上あること
- 厚生年金保険に1年以上加入していたこと
参考:日本年金機構「特別支給の老齢厚生年金」
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roureinenkin/jukyu-yoken/20140421-02.html
上記の条件を満たす方は、65歳になる前から「報酬比例部分」の年金を受け取ることができます。
しかし、この特別支給の老齢厚生年金を受給している方がハローワークで失業保険の手続きをすると、年金は全額支給停止となります。
具体的には、求職申し込みをした日の翌月から、失業保険の受給期間が終了する月まで年金が止まる仕組みです。
ここで注意したいのは、「失業保険を実際にもらった月」だけでなく、「給付制限期間中」も年金が止まるという点です。
自己都合退職の場合、失業保険は原則1か月(2025年4月以降の離職の場合)の給付制限期間を経てから支給されますが、この期間中も年金は支給停止となります。
60〜64歳で損をしないための受給戦略
60〜64歳の方は、失業保険と年金のどちらを優先するか慎重に判断する必要があります。
結論から言うと、多くのケースでは失業保険を選んだほうが総受給額は多くなります。
その理由は、失業保険の基本手当日額が年金の月額を上回ることが多いためです。
たとえば、退職前6か月の給料が月額36万円だった方の場合を見てみましょう。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 基本手当日額(目安) | 約5,400円 |
| 失業保険の月額換算(5,400円×30日) | 約162,000円 |
| 特別支給の老齢厚生年金(仮に月額12万円の場合) | 120,000円 |
| 差額 | +42,000円(失業保険が有利) |
このように、失業保険のほうが金額的に有利になるケースが多いのです。
- 失業保険は非課税だが、年金は課税対象
- 失業保険は受給期間が限られているが、年金は65歳まで継続
- 失業保険を受け取るには求職活動が必要
特に、「働く意思がなく、のんびり過ごしたい」という方は失業保険の対象外となるため、年金を選択せざるを得ません。
逆に、「次の仕事を探しながら収入を確保したい」という方は、失業保険を受け取るほうが合理的です。
高年齢雇用継続給付を受けている場合の注意点
60歳以降も同じ会社で働き続けている方の中には、「高年齢雇用継続給付」を受け取っている方もいるでしょう。
高年齢雇用継続給付とは、60歳以降に賃金が60歳時点と比べて75%未満に下がった場合に、その差額を補填してもらえる制度です。
この給付を受けている場合、特別支給の老齢厚生年金との間で併給調整が発生します。
具体的には、高年齢雇用継続給付を受け取ると、年金の一部(最大で賃金の6%相当額)が減額されます。
| 60歳時点の賃金に対する割合 | 年金の減額率 |
|---|---|
| 61%未満 | 賃金の6% |
| 61%以上75%未満 | 段階的に減少 |
| 75%以上 | 減額なし |
参考:日本年金機構「年金と雇用保険の高年齢雇用継続給付との調整」
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roureinenkin/koyou-chosei/20140421-01.html
退職後に失業保険を申請する場合は、この高年齢雇用継続給付から基本手当への切り替えが必要です。
切り替えのタイミングを間違えると、一時的に給付が途切れる可能性もあるため、ハローワークの窓口で事前に確認しておくことをおすすめします。
【65歳以上】年金と失業保険を両方受け取る方法
65歳以上になると、年金と失業保険の関係性は大きく変わります。
最大のメリットは、「併給調整がなくなる」という点です。
つまり、65歳以降は老齢年金を満額で受け取りながら、失業保険(高年齢求職者給付金)も同時に受け取ることができるのです。
- 年金と失業保険を両方フルで受け取れる
- 高年齢求職者給付金は一括支給なので手続きが簡単
- 何度でも受給できる(年齢上限なし)
- 雇用保険の加入期間が6か月以上あれば対象
ただし、65歳以上で受け取れる失業保険は「基本手当」ではなく「高年齢求職者給付金」という別の制度に切り替わります。
支給方法や金額が64歳以下とは異なるため、その違いをしっかり理解しておきましょう。
65歳以降は「高年齢求職者給付金」に切り替わる
65歳以上で退職した方が受け取れるのは、基本手当ではなく「高年齢求職者給付金」です。
基本手当との大きな違いは、支給方法と金額にあります。
| 項目 | 基本手当(64歳以下) | 高年齢求職者給付金(65歳以上) |
|---|---|---|
| 支給方法 | 4週間ごとに分割 | 一括支給 |
| 支給日数 | 90日〜240日 | 30日または50日 |
| 求職活動 | 4週間ごとに認定が必要 | 1回の認定で終了 |
| 年金との調整 | あり(60〜64歳の場合) | なし |
高年齢求職者給付金の支給日数は、雇用保険の被保険者期間によって決まります。
- 被保険者期間が1年未満の場合:30日分
- 被保険者期間が1年以上の場合:50日分
金額の計算方法は基本手当と同様で、「基本手当日額×支給日数」で算出されます。
たとえば、基本手当日額が5,000円で被保険者期間が1年以上ある方の場合、5,000円×50日=250,000円を一括で受け取れます。
老齢年金との同時受給が可能な理由
65歳以上で高年齢求職者給付金を受け取っても、老齢年金が減額されたり停止されたりすることはありません。
これは、65歳以降の老齢年金と雇用保険の基本手当との間には、法律上の併給調整規定が存在しないためです。
東京都職員共済組合の資料では、以下のように説明されています。
「65歳以上で退職した場合の失業給付は7日間の待期期間後、一時金として支給されます。65歳以降の本来支給の老齢厚生年金は、雇用保険の基本手当との併給調整はありません。」
引用:東京都職員共済組合「雇用保険法による失業給付と年金額の調整」
https://www.kyosai.metro.tokyo.jp/nenkin/nenkin-zenpan/sonota/koyouhoken.php
つまり、65歳以上の方は年金と高年齢求職者給付金を両方フルで受け取れるのです。
これは、64歳以下の方と比べると大きなメリットといえます。
| 項目 | 金額(目安) |
|---|---|
| 老齢基礎年金(満額の場合) | 月額約68,000円 |
| 老齢厚生年金(平均的なケース) | 月額約100,000円 |
| 高年齢求職者給付金(50日分の場合) | 一括で約25万円〜35万円 |
年金を受け取りながら、さらに一時金として数十万円が上乗せされるため、退職後の生活資金として心強いサポートになります。
65歳以上で働き続けるか迷ったときの判断ポイント
65歳を迎えた方の中には、「このまま働き続けるべきか、それとも退職すべきか」と迷っている方も多いでしょう。
判断する際には、以下のポイントを総合的に考慮することをおすすめします。
- 毎月の収入が安定する
- 社会とのつながりが維持できる
- 厚生年金に加入し続けることで、将来の年金額が増える
- 高年齢求職者給付金を受け取れる
- 自由な時間が増える
- 体力的な負担から解放される
特に注目したいのは、「高年齢求職者給付金は何度でも受け取れる」という点です。
65歳以降に再就職して6か月以上雇用保険に加入すれば、再度退職した際にもう一度給付金を受け取ることができます。
また、高年齢求職者給付金には年齢の上限がないため、70歳を過ぎても条件を満たせば受給可能です。
年金と失業保険を満額でもらう「退職時期」の選び方
年金と失業保険を最大限に活用するためには、「いつ退職するか」が非常に重要になります。
退職日がたった1日違うだけで、受け取れる金額に数十万円の差が生じることもあるのです。
| 退職時期 | 受給できる給付 | 支給日数(20年以上加入・自己都合) | 年金との調整 |
|---|---|---|---|
| 64歳11ヶ月で退職 | 基本手当 | 最大150日 | 65歳以降の受給なら調整なし |
| 65歳で退職 | 高年齢求職者給付金 | 最大50日 | 調整なし |
| 差額 | – | 100日分 | – |
特に、65歳前後で退職を考えている方は、退職時期の選び方を慎重に検討する必要があります。
ここでは、損をしないための退職タイミングについて詳しく解説します。
64歳11ヶ月退職が有利とされる理由
「64歳11ヶ月で退職するのがお得」という話を聞いたことがある方もいるかもしれません。
これには、しっかりとした理由があります。
64歳11ヶ月(つまり65歳の誕生日を迎える直前)で退職すると、以下の2つのメリットを同時に得られるのです。
- 65歳未満の退職として扱われるため、「基本手当」を受給できる
- 65歳になってから基本手当を受け取れば、年金との併給調整がない
つまり、基本手当の受給資格を得た上で、実際に受け取るのは65歳になってからにすることで、年金と基本手当の両方を満額で受け取れるという仕組みです。
社労士の解説記事では、以下のように説明されています。
「65歳前に退職しなければ基本手当は受給ができない。基本手当は、退職日が65歳到達日前でなければ受給資格が得られません。」
基本手当と高年齢求職者給付金の受給総額を比較してみましょう。
| 退職時期 | 受給できる給付 | 支給日数(自己都合・20年以上加入) | 概算総額 |
|---|---|---|---|
| 64歳11ヶ月で退職 | 基本手当 | 150日 | 約75万円〜111万円 |
| 65歳で退職 | 高年齢求職者給付金 | 50日 | 約25万円〜35万円 |
| 差額 | – | 100日分 | 約50万円〜76万円 |
このように、退職日が1日違うだけで数十万円の差が生じる可能性があるのです。
65歳の誕生日前日までに退職すべきタイミング
64歳11ヶ月で退職するといっても、具体的にいつまでに退職届を出せばいいのか迷う方も多いでしょう。
ここで重要なのは、雇用保険法における「年齢の考え方」です。
雇用保険法では、「年齢計算に関する法律」に基づき、誕生日の前日の午前0時に満年齢に達するとされています。
たとえば、9月30日が誕生日の方は、9月29日に65歳になるということです。
つまり、64歳のうちに退職するためには、誕生日の2日前までに退職する必要があります。
| 誕生日 | 65歳到達日(法律上) | 64歳として退職できる最終日 |
|---|---|---|
| 9月30日 | 9月29日 | 9月28日 |
| 1月15日 | 1月14日 | 1月13日 |
| 4月1日 | 3月31日 | 3月30日 |
この「誕生日の前々日」というルールは非常に重要です。
1日間違えるだけで、受け取れる給付金の種類が変わってしまうため、退職日は慎重に決定してください。
会社都合退職・自己都合退職で変わる給付日数
失業保険の給付日数は、退職理由によっても大きく異なります。
会社都合退職(倒産や解雇など)の場合は、自己都合退職と比べて給付日数が多く設定されています。
60歳以上65歳未満の方の場合、給付日数は以下のようになります。
| 被保険者期間 | 給付日数 |
|---|---|
| 1年以上10年未満 | 90日 |
| 10年以上20年未満 | 120日 |
| 20年以上 | 150日 |
| 被保険者期間 | 給付日数 |
|---|---|
| 1年以上5年未満 | 180日 |
| 5年以上10年未満 | 240日 |
| 10年以上20年未満 | 270日 |
| 20年以上 | 330日 |
参考:ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」
https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_benefitdays.html
会社都合退職の場合は最大330日と、自己都合退職の150日と比べて2倍以上の日数を受け取れます。
ただし、注意したいのは「離職理由の判定」です。
会社の定年が65歳の場合に64歳で自ら退職すると、離職理由は「自己都合」となり、給付制限も発生します。
一方、定年が「65歳の誕生日月」と定められている会社で、誕生日の前々日に定年退職する場合は、会社都合として扱われる可能性があります。
退職前に会社の就業規則を確認し、自分の離職理由がどのように判定されるかを把握しておくことが大切です。
年金と失業保険を同時にもらうための手続き手順
年金と失業保険を受け取るためには、それぞれ別々の窓口で手続きが必要です。
手続きの順序やタイミングを間違えると、給付が遅れたり、受け取れる金額が減ったりする可能性があります。
| 手続き | 窓口 | タイミング | 必要書類 |
|---|---|---|---|
| 失業保険の申請 | ハローワーク | 離職票が届いたらすぐ | 離職票、マイナンバーカード等 |
| 年金の届出 | 年金事務所 | 失業保険申請後 | 受給資格者証のコピー等 |
| 年金請求 | 年金事務所 | 65歳になったら | 年金請求書、戸籍謄本等 |
ここでは、スムーズに手続きを進めるための具体的な流れを解説します。
退職前に確認しておくべき書類と情報
退職してからバタバタしないために、在職中に以下の書類や情報を確認・準備しておきましょう。
- 年金証書(すでに年金を受給している場合)
- 年金額改定通知書
- ねんきん定期便
- 雇用保険被保険者証
- 離職票の受け取りスケジュール(会社に確認)
特に離職票は、ハローワークでの手続きに必須の書類です。
会社によっては発行までに1〜2週間かかることもあるため、退職前に「いつ届くか」を確認しておくと安心です。
- 雇用保険の被保険者期間(通算で何年何か月か)
- 退職前6か月間の賃金総額
- 退職理由(自己都合か会社都合か)
- 年金の受給開始予定時期
ハローワークでの失業保険申請の流れ
退職後、失業保険を受け取るためにはハローワークでの手続きが必要です。
- 離職票-1および離職票-2
- 雇用保険被保険者証
- マイナンバーカードまたは通知カード
- 本人確認書類(運転免許証など)
- 証明写真2枚(縦3cm×横2.5cm)
- 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード
年金を受給している方は、その旨をハローワークの窓口で申告してください。
60〜64歳で特別支給の老齢厚生年金を受けている場合、求職申し込みをした時点で年金の支給停止手続きが進められます。
年金事務所での手続きと届出
年金の手続きは、最寄りの年金事務所または街角の年金相談センターで行います。
すでに年金を受給している方が失業保険の手続きをした場合、年金事務所への届出が必要になるケースがあります。
具体的には、年金請求時に雇用保険被保険者番号を届け出ていなかった方は、「老齢厚生・退職共済年金受給権者支給停止事由該当届」を提出する必要があります。
ただし、年金請求時にすでに雇用保険被保険者番号を届け出ている場合は、自動的に情報が連携されるため、追加の届出は不要です。
失業保険の受給が終了すると、年金の支給停止も解除されます。
解除後の年金は、失業保険の受給終了から約3か月後に支給が再開されるのが一般的です。
障害年金・遺族年金と失業保険の同時受給について
老齢年金以外にも、障害年金や遺族年金を受給している方がいます。
これらの年金は、失業保険との関係においてどのように扱われるのでしょうか。
結論から言うと、障害年金と遺族年金は失業保険との併給調整がないため、両方を同時に受け取ることができます。
| 年金の種類 | 失業保険との同時受給 | 注意点 |
|---|---|---|
| 障害基礎年金 | 可能 | 「働ける状態」であることが条件 |
| 障害厚生年金 | 可能 | 「働ける状態」であることが条件 |
| 遺族基礎年金 | 可能 | 特になし |
| 遺族厚生年金 | 可能 | 65歳以降は老齢年金との選択あり |
このセクションでは、それぞれの詳細について解説します。
障害年金をもらいながら失業保険を受給できるか
障害年金を受けている方でも、条件を満たせば失業保険を受給することができます。
社会保険労務士法人ゆうき事務所の解説では、以下のように説明されています。
「障害年金と失業手当には併給調整がないので、どちらかが減額されたり、支給停止になったりすることなく、2つの制度からそれぞれ支給を受けられます。」
引用:大阪障害年金サポートデスク「障害年金と失業保険のダブル受給は可能?」
https://sr-yuuki.com/blog/disability-pension-unemployment-insurance/
ただし、失業保険を受け取るためには「働く意思と能力がある」ことが条件となります。
- 短時間勤務や配慮があれば働ける
- パートやアルバイトとして週20時間以上働ける
- 医師から「就労可能」と診断されている
逆に、「病気やケガのために当面働けない」という状態では、失業保険の対象外となります。
この場合は、失業保険の受給期間延長を申請し、働ける状態になってから受給を開始することができます。
なお、特に数値で障害の程度が測定される傷病(視力障害、聴力障害など)や、人工透析・人工弁を装着している方は、労働能力に関係なく障害年金の等級が決まるため、失業保険との両立がしやすい傾向にあります。
遺族年金と失業保険は調整なく併用可能
遺族年金と失業保険の間には、併給調整の規定がありません。
そのため、遺族年金を受け取りながら失業保険を受給しても、どちらも満額で受け取ることができます。
遺族年金が調整対象外となっている理由は、遺族年金の給付目的が「亡くなった方に生計を維持されていた遺族の生活保障」であり、「本人の老齢や失業」とは異なる事由に基づいているためです。
ただし、65歳以降に老齢年金の受給権が発生した場合は、遺族年金と老齢年金の間で選択または調整が必要になるケースがあります。
- 老齢基礎年金+老齢厚生年金を選択
- 老齢基礎年金+遺族厚生年金を選択
- 老齢基礎年金+老齢厚生年金の1/2+遺族厚生年金の2/3を選択
どのパターンが最も有利かは、それぞれの年金額によって異なります。
年金事務所で試算してもらい、最も受取額が多くなるパターンを選択することをおすすめします。
年金と失業保険の受給で損しないためのチェックリスト
ここまで解説してきた内容を踏まえて、退職前にやっておくべきことをチェックリストとしてまとめました。
このチェックリストを活用することで、「知らなかった」「忘れていた」という失敗を防ぐことができます。
| チェック項目 | 確認先 | 重要度 |
|---|---|---|
| 雇用保険の加入期間 | 雇用保険被保険者証・給与明細 | ★★★ |
| 年金の受給開始時期 | ねんきん定期便・年金事務所 | ★★★ |
| 退職日の決定 | 会社の就業規則 | ★★★ |
| 離職票の記載内容 | 離職票-2 | ★★☆ |
| 受給額のシミュレーション | ハローワーク窓口 | ★★☆ |
退職前にやっておくべき5つの確認事項
退職を決める前に、以下の5つの項目を必ず確認しておきましょう。
①雇用保険の加入期間を確認する
失業保険の給付日数は、雇用保険の被保険者期間によって決まります。
雇用保険被保険者証や給与明細で、通算の加入期間を確認してください。
転職経験がある方は、前職の加入期間も通算できる場合があります。
②年金の受給開始時期を把握する
自分が何歳から年金を受け取れるのか、ねんきん定期便や年金事務所で確認しましょう。
特別支給の老齢厚生年金を受け取れる方は、失業保険との調整があることを忘れないでください。
③退職日を慎重に決める
65歳前後で退職する場合は、誕生日の前々日までに退職することで基本手当を受け取れます。
会社の定年制度や退職金の規定も確認し、総合的に判断してください。
④離職票の記載内容をチェックする
離職票が届いたら、離職理由が正しく記載されているか確認しましょう。
自己都合と会社都合では給付日数が大きく異なるため、記載内容に誤りがあれば会社に修正を依頼してください。
⑤受給額のシミュレーションを行う
ハローワークのWebサイトや窓口で、失業保険の概算受給額を試算してもらえます。
年金額と比較して、どちらを優先すべきか検討しましょう。
よくある失敗例と回避方法
実際に多くの方が経験している失敗例と、その回避方法をご紹介します。
Aさん(64歳・9月30日生まれ)は、「64歳のうちに退職すればいい」と思い、9月29日に退職届を出しました。
しかし、雇用保険法では9月29日が65歳到達日にあたるため、Aさんは「65歳以上の退職」として扱われてしまいました。
結果、基本手当(150日分)ではなく高年齢求職者給付金(50日分)しか受け取れず、約60万円を損してしまいました。
→ 回避方法:誕生日の2日前までに退職する。9月30日生まれなら、9月28日までに退職する。
Bさんは65歳で退職後、ハローワークで失業保険の手続きだけ行い、年金事務所への届出を忘れていました。
その結果、年金の受給開始手続きが遅れ、本来受け取れるはずだった年金が3か月分遅延してしまいました。
→ 回避方法:退職前に年金事務所で「年金請求書」を受け取り、65歳になったらすぐに提出する。
これらの失敗は、事前の情報収集と計画的な行動で防ぐことができます。
不安な点があれば、年金事務所やハローワークの窓口で相談することをおすすめします。
年金と失業保険の同時受給に関するよくある質問
最後に、年金と失業保険の同時受給についてよく寄せられる質問にお答えします。
| 質問 | 回答のポイント |
|---|---|
| 年金をもらいながら失業保険はもらえる? | 65歳以上なら可能。60〜64歳は調整あり |
| 64歳で退職したらどうなる? | 失業保険を優先したほうが得なケースが多い |
| 65歳以上で両方もらえる? | 高年齢求職者給付金と年金を同時に受給可能 |
| 64歳11か月退職で年金はもらえる? | 65歳以降の受給なら調整なしで両方もらえる |
Q. 年金をもらいながら失業保険はもらえるの?
回答:年齢と年金の種類によって異なります。
65歳以上の方は、老齢年金と高年齢求職者給付金を両方受け取ることができます。
60〜64歳の方は、失業保険(基本手当)を受給すると、特別支給の老齢厚生年金が支給停止になります。
ただし、障害年金や遺族年金は失業保険との調整がないため、年齢に関係なく同時に受け取れます。
Q. 64歳で退職したら失業保険と年金はどうなるの?
回答:64歳で退職した場合、失業保険(基本手当)を受給することができます。
ただし、特別支給の老齢厚生年金を受けている方は、失業保険を受給している間は年金が全額支給停止となります。
多くの場合、失業保険のほうが年金よりも受給額が大きいため、総額で見ると失業保険を受け取ったほうが得になることが多いです。
なお、65歳になった後に失業保険を受け取る場合は、年金との調整がなくなるため、両方を満額で受け取れます。
Q. 65歳以上で年金と失業手当を両方もらうことはできますか?
回答:はい、65歳以上の方は年金と失業手当(高年齢求職者給付金)を両方受け取ることができます。
65歳以上で受け取れる高年齢求職者給付金は、老齢年金との併給調整がありません。
そのため、年金を満額で受け取りながら、さらに高年齢求職者給付金を一括で受け取れます。
支給日数は、雇用保険の被保険者期間が1年以上あれば50日分、1年未満の場合は30日分となります。
Q. 64歳11か月で退職したら年金はもらえる?
回答:64歳11か月で退職した場合、65歳になれば老齢年金を受け取ることができます。
また、64歳11か月での退職は「65歳未満の退職」として扱われるため、失業保険は「基本手当」を受給できます。
基本手当は65歳になってから受給を開始することで、年金との調整を回避できます。
つまり、64歳11か月で退職→65歳以降に基本手当を受給という流れにすることで、年金と基本手当の両方を満額で受け取れるのです。
ただし、退職日は必ず「65歳の誕生日の前々日まで」にしてください。
誕生日の前日に退職すると、法律上は65歳として扱われ、基本手当ではなく高年齢求職者給付金の対象となってしまいます。

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